第33回帆船模型展を観る

会場の一隅にはこの年に出版された本も展示。
会場の一隅にはこの年に出版された本も展示。


30年を超える歴史の年月を絶えることなく積み重ねつつ、毎年、年明け早々伊東屋銀座本店で開催され『新春の銀座の風物詩』という言葉がすっかり定着した「ザ・ロープ帆船模型展」。今年も、恒例どおり伊東屋のご好意による開幕前夜のオープニングパーティに始まり、1月17日から18日間にわたる第33回を迎え、開催された。例年のことながら、伊東屋さんの正面玄関に「ザ・ロープ帆船模型展」と言う看板が大きく掲げられると、晴れがましくもあり誇らしくもある気分になるのは、ザ・ロープ会員誰しもが抱く思いであろう。

展覧会の評価として大切な指標の一つである来場者数も、今冬、2年ぶりとかいう寒波襲来の中にも関わらず、例年並みの7,569人という、多くの人の来場を頂いた。展示会として満足すべき成果であったと言えよう。出展作品は64点。今年は、全体に小ぶりな作品が多く、会場の印象としては地味であり、「華」が欲しかったと言う印象ではあるが、丁寧に作りこまれた作品群はいつものことながら魅惑的であった。ただ、出展作品がヴァラエティに富んでいるかと言う視点から眺めると、同型艦グループに属するもの幾つかが目立ち、展示の多様性という観点からは、いまひとつという気がした。もっとも、そういう中にあって同じグループに属していても、個々の作品は、それぞれの作者が、他との違いを表現しようという自己主張が見られ、今後の特色ある作品、つまり船種の選択も含め、作風に個性が生まれてくる萌芽が感じられた。皆さんの次なる作品にどのような個性が現れて来るか、期待が持たれた。

ところで、最近は来場された方々の中から、インターネット上に、自ら撮影した展示作品の写真入りで、日時を置かず、すぐ感想なり評価を出してくる人たちがいる。怖くもあり面白くもある。上述した多様さが足らないと言う傾向に対するアンチテーゼというわけでもあるまいが、今回の展覧会に対しては、有名小説に登場する船や変わった用途の船に関心を寄せ、『普段見る機会の無い特色のある船を見ることができて面白かった』という言い方で話題に取り上げられていることが多かった。

こういう見方が、必ずしも一般の方々の普遍的な反響や評価というわけでもないとは思うが、展覧会全体の姿と言う大きな視点から眺めたとき、時代や船の種類などの幅が広ければ、一般の方には、その多様さにより興味を惹き付けられながら見て廻って頂けるのかな、と考え込まされた。「『ザ・ロープ帆船模型展』は『銀座の文化』である」と言う言葉も頂いている。先輩達が築き、積み上げてきた展の歴史の中の作品達の多様性と豊かな個性が、展示会をして斯く呼んでもらえる所以であると私は思っている。来場のザ・ロープオーサカと神戸帆船模型の会今展を観て、一部には「自分らしさ」の主張が生まれつつあると感じたが、それが今後もっと広がって欲しいと思った。そして、趣味が本来あるべき「楽しくやろう」も忘れずに。

展示会には船の科学館、青森、仙台、東京、横浜、浜松、大阪、神戸、下関、沖縄の全国同好会および宮沢模型、ウッディジョーの各位外多数のご来場を頂いた。マスコミではTBSラジオで永六輔氏からの展示会紹介とご本人の来場、読売新聞、茨城新聞、世界の艦船3月号、KAZI(舵)3月号、モデルアート3月号のイベントコラムに紹介があった。展示会前に東康生、白井一信著の写真集「華麗なる帆船模型」が出版され、会場に置かれた見本に来場者の関心が集まっていた。

(松本 善文)




42-02 "Santa Maria" Kiyoshi TAKANARITA
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