アメリカの帆船模型キット

 

 

福田 正彦 

 

本当のことをいうと、ここニューポートニューズへ来た目的はマリナーズ・ミューゼアムの見学だ。このミューゼアムが主催して5年に1回コンペティションが開かれ、ちょうどわれわれが行った1995年にコンペがあった。ザ・ロープの坪井さんの作品が推薦ということで展示されているので、それを見るのも楽しみのうちだ。このコンペはノーティカル・リサーチ・ギルドが協賛していて、ワシントンへ行く飛行機の中で、中山さんからその審査規準だという英文の5ページにもわたる資料を手渡されていた。全部は読めないiナれども、その資料によると著者はこのギルドのディレクターであるアランD.フラツァーさんで、いろいろなコンペの審査もしている。

 

延々とその審査の過程を述べているのだが、100点満点の内容を大きく分iナると、「全般的な印象」が10点、制作者がどれほど正確に調査をしているがという「調査」に20点、「難易度」に20点、「スケールの正確度」に20点、それと「クラフトマンシップ」に最大の30点を与えている。このクラフトマンシップというのは辞書には「技能」とか「腕前」とか載っているiナれども、ぼくにはどうもそれだけではないように思える。いってみれば、作品に制作者の“心意気”といったものが感じられるかどうかも含まれているのではないだろうが。

 

それはともかく、フラツァーさんは「審査というのは容易な仕事ではない」といっているが、そうだろうと思う。また審査項目はコンピューターにのせられるようなものではないといい、だから人が審査するんだともいっている。こういう審査を経ることで作品とミューゼアムの権威も高まるのだろうし、アメリカ式のやり方が分かって面白くもある。

 

われわれが訪問したのは午後1時を回った頃だが、広大な林の中にある白亜の建物は物静かで、人もほとんどいない。館内すら深閑としていて、コンペの作品がどこにあるやら、受付の元お嬢さんすら、はてなという鉢だった。もちろんコンペそのものはとうに終わっていて、入賞と推薦の作品が並んでいるばかりだから、華やがさというものはおよそないのた。が、ずっと奥にある入賞作品を眺めると、さすがに見応えがある。

 

金賞は2本マストのヨットで、右舷側がブランキングがなく内部照明で中が見え、キャビンの戸棚まで開くようになっているのか分かる。「プッシュボタン」という奇妙な名の船だが、しみじみ眺めるといかにもこの船が可愛くってしょうがないという作者の気持ちが伝わってくる。

 

確か銀賞だったと思うが、女性の作者のボート、これがまたいい。オール1対の小さなボートだが、この船の持つ凛とした気品というものが審査員にアピールしたのではないだろうか。闇素な美しきを教えてくれる作品だ.アメリカでは帆船も現代船も同じレベルで扱われるがら、スマートな駆逐艦や商船も展示されている。しかし、現代艦はどちらかというと艦橋構造のようにプラキャストがものを言う場面が多い。アメリカでは帆船も現代船も一つの歴里のラインに沿った流れとして違和感がないのだろう。その辺の感覚はわれわれとちょっと違うが、それはわが国にフルリッグドシップの長い歴史がないからに違いない。

 

坪井さんの作品は「推薦」で、小さなテープルに一つだiナ飾られていた。あったあったと皆で取り囲み、満足してほかへ回る。本館から少し外に、大きなトタン屋根の建物があって、スモールクラフト・コレクションとある。ベニスのゴンドラからテムズ川のスチームポートまで、本物の小艇が雑然とおいてある。将来整理するんだろうが、とにかく集めておくというやり方も一つの方法だなあと思わせる。

 

やがて見学を終えて外へ出ると、松林の中の木製テーブルで年輩の女性が二人、弁当を広げている。どうも日本人らしいせと遠巻きにしてみな躊躇しているうちに、渡辺さんつかつかと進んでなにやら話しかiナている。にぎやかな話し声におそるおそる近づくと、結婚して戦後問もなしに移り住んだ人たちだそうで、持参のお稲荷さんや太巻き寿司をそろそろおいしくなる頃でしょ、どうぞ召し上がってとおっしゃる。思いもかiナぬご馳走に預かったが、これをもたらした渡辺さんに、誰やらが密かに”ババゴロシ”とか訳の分からぬ賛辞を呈していたっiナ。

 

(ザ・ロープニュースNo.24)