セーラムのミルクティー

 

 

福田 正彦 

 

アメリカの東海岸、ボストンから北東へ車で30分(まともに行けは)のところにセーラムという小さな町がある。その昔、捕鯨船の基地として栄えたところだが、それよりもアメリカで唯一魔女裁判が行われたことで、つとに名を馳せている。何せ部屋に鍵をかけなくとも大丈夫という、アメリカとしては例外的に治安のいいところだし、少し旅にも慣れたがら今日は自由行動だと、われら5人は思い思いに行動したあげく、昼食にまた寄り集まった。10月半ばのニューイングランドとはいっても、天気はいいし思いの外暖かい。お目当てのピーボディ・工セックス・ミューゼアムの他にもいろいろと歩き回って、少しばかり汗もかいたし簡単な食事でゆっくりしようやと町中にある安食堂にぞろぞろと入った。

 

さほど広くもない半地下式の食堂で、奥の厨房の前に半円形のカウンターがあり、粗末なテーブルと椅子が何組かおいてある。旅行メモを見ると、そのときぼくは、ハムとチーズのサンドイッチと紅茶を注文したことになっている。

 

その紅茶が問題で、ぼくは大きな声で「・・それとミルクティ」といったのだ.とだんに、注文を取りに来ていたクリクリした目の、ぽっちゃりした若いおねぇちゃんが、ケラケラ笑ってそれおかしい、という。こっちは少しもおかしくないからきょとんとしていると、まだ笑っている。少しむっとして「日本じゃミルクデイというんだぜ」と念を押すと、かのおねぇちゃんはOK、OKと頷いて奥の厨房へ、「ミルクティ!!」と食堂中に響きわたるような大きな声で注文した.さすがに今度はぼくたちも一緒に大笑いになった。

それから彼女とすっかり仲良くなって、本当はなんていうんだいと聞いたら、「ティー・ウィズ・ミルク」というんだそうな。一方で彼女はストローを2 本持ち出して、著の使い方を教えろといってきた。下の著は固定して、上で挟むんだよ、ぼらね、とやって見せだがそんなにうまくいがないと、寄り集まってき た仲間ときゃっきゃと笑う。箸が転げてもおかしい年頃とあって、まことに楽しい昼食だった。たった4ドルでこんな経験ができるのだから旅は止められない。

 

そもそも、アメリカの東毎岸の海事博物館を見て回ろうと提案したのは、横浜帆船模型同好会の仲間の中山宣長さんである.マサチエ-セッツ州に勤務経験のある 中山さんがレンタカーで回ろうというのに渡辺晋さん、鈴木雄助さん、それと横浜の仲間の平戸重男さんが乗った.車だから5人でいっぱい。12日間で、ぜ-んぶ入れて30万円まで掛からなかった安旅行だが、中山さんの名プランで、ワシントンD.C.を皮切りに、南はニューポート・ニューズから北はこのセーラ ムまで、ほとんどの海事博物館を見て回った。おまけにニューヨークのプライムリブ、ステイーマーという変な員とかボストンの由緒あるユニオン・オイスタ 一・ハウスのカウンターでの牡蝿やチェリーストーンという天下の珍味を堪能するというおまけ、いやこれが半分は本命という食べ歩き旅行でもあったのだ。

 

これから何回がこの旅をご紹介しよう。

 

 

 

(ザ・ロープニュースNo.15)