15.フェリーと市電

タクシーで小用の港へ着くと広島へはたくさんの便がある。われわれは13:33の船で行くのだ。広島行きはすべて高速船でフェリーはない。呉行きにはかなりフェリーがあるから、車で行く用が多いのかもしれない。雨はまだ降り止まない。今日は一日だめだなとみんな言いながら高速艇に乗り込み、22分の船旅を楽しむ。

途中で小用に向かう高速艇に出会うが、こっちもあんな姿なんだろうとあちこちで写真を撮っている。船内は意外に広く、他にあんまり乗客がいないせいもあってみんなでゆっくりおしゃべりができる。もっともぼくはとてもそんな?気な感じではなくて、どうもいかんなあという気の方が先に立つ。

やがて広島に着くが、広島といってもここは宇品港だ。広島市の外港といってもいいが、明治27~28年の日露戦争のころ、広島に大本営が置かれ兵士たちはここ宇品港から輸送船で朝鮮や中国に出て行ったのだ。

司馬遼太郎の「坂の上の雲」にもこの宇品港が出てきたりしてぼくの印象に強い港だから、それなりに興味を持って見るのだが、埠頭に降り立って見ると当然ながらさして普通の港と変わりはない。ぼーっとした頭の中で、明治時代の骸骨様式の軍服を着た兵士たちがざわざわと動き回るという幻想が左右するだけだ。

 

宇品からは市電に乗って広島駅に行く。おぎのさんだったか、市電は2系統あって間違えるとぐるりと回らなければならないから注意してくださいという。見ると何両かが連結しているスマートな電車はそのぐるり系統らしい。まっすぐ駅へ行くのはちょっと古いタイプの市電だ。

14時7分われわれを乗せた電車が宇品駅を出発。この電車も貸し切り状態でいろいろ話が飛び交う。予定をすべて無事にこなしたからなんとな
くみんな満足しているのだろうと思う。

やがて市内を通って電車は広島駅に着く。この旅は現地集合、現地解散だから駅でみんなとはお別れだ。それぞれに挨拶を交わし、いい旅だったねと思いを残して帰路に就く。

ぼくはもう限界だった。本来ならせっかく広島まで来たのだ。ちょっと時間的な余裕もあるから広電で宮島口まで足を延ばし、明治34年創業の「うえの」のア ナゴ弁当を買って新幹線でかみさんと一緒ににんまりしながら食べるつもりだった。それが広電どころか待合所の椅子にへたり込んで、それでもアナゴ弁当だけ は執念もあって駅の売店で買ってもらったのだが、帰ってからふたを開けたら何とも貧弱な「うえの」の弁当とは似ても似つかぬもので大いにがっかりした。今 回の旅行でぼくが唯一残念に思うのがこれだ。自分で招いた風邪とはいえ残念無念、あのアナゴ弁当は今でも食べてみたい。


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